「エッセイ」カテゴリーアーカイブ

うどん

昔からうちのあたりではうどんを食べる習慣があったらしい。
聞いた話だけど、例えばお葬式の後の会食にはうどん、親戚が集まるとうどん、要するに都会ではお寿司を食べるようなタイミングでうどんを食べたらしい。さらに大晦日は年越しうどんを食べる。

理由はよく分からないけど、そのせいか地元にもうどんを主力にする製麺所が何軒かある。そのうちの一軒は隣町にあって、ここは高校時代の友人の実家だ。

彼とは趣味が同じだったこともあり、学校帰りには毎日立ち寄って部屋で趣味話をしながらダラダラすごし、時々うどんを「踏む」のを手伝ったりもした。この辺のうどんは作る過程で「踏む」があるのだ。踏むことでコシが出るらしい。
さらに大晦日近くの数日は友人たちが集まってうどんを踏んだり、販売を手伝ったりしたのが懐かしい。

高校を卒業すると友人は「いつか店を大きくするために」と行って経済を学ぶ大学に進んだ。大学を卒業すると「いつか自分の店でうどんを食べさせたい」と言って鎌倉にある老舗うどん屋さんに住み込みの修行に5年くらい行っていた。

それから30年くらい経って、お互いいろいろあって、最近までちょっと距離が有ったのだけど、「販売所が増えた」とか「ネットで話題になっている」とかちょっとしたウワサになっているのは知っていた。

そして久しぶりに自分も彼の製麺所を訪ねた。
店先に行くと昔と変わらずに彼のお母さんが販売をしていた。
店先の案内を見ると市内に3つも店が増えていた。
久しぶりに会った彼は昔のぽっちゃり体形からちょっと絞まった体つきになって、でも昔と変わらずニコニコしながら出てきた。

年中無休で、朝早くから夜までフル稼働でうどんを作っていること、息子さんが大学生で店を手伝ってくれている事、食べさせるお店はまだできてないけど、これからやっていきたいという事・・。仕事中なので長くは話せなかったけど、久しぶりに会って懐かしい話もできた。
自分も数十年ぶりに高校時代のあだ名で呼ばれた(笑

帰ってうどんを作って食べる。
忘れていた懐かしい味がぱっと頭の中によみがえってくる。ちょっと武骨な太めのうどん。それでいて喉をするっと通る食べ心地。具材がなくてもつゆと生卵が一個あれば十分。ついでに毎日のように食べていた高校時代のことまで思い出す。

たぶんこの味は誰に食べてもらっても喜んでもらえる味だと思う。
自分の好きな人達には是非食べてほしい!と思うのでこれからしばらくの間、自分の好きな人達へのお使い物はうどんにしよう。

贈答用の箱なんて無いから、武骨なうどんが紙に包まれて、ビニール袋にドサっと入っただけのお使い物。カッコつけないその素朴さ込みで楽しんでもらえたら嬉しい。

「次はだれに食べてもらおうかな」なんて考えて、楽しくなるうどんを友達が作っている事がちょっと誇らしい。

http://www.oishii-udon.com/